HIPHOPで一番好きなアーティストは誰か?
そう聞かれた時、必ず「DJ KRUSH」と答えてきた。
それはこれからも変わらないだろう。
なぜなら、私がトラックメーカーになるきっかけになったアーティストであり、DJ KRUSHの音世界に何度も救われたと感じているからだ。
そんな彼の話から始めようと思う。
今回は長くなりますよ(笑)
まず彼は何者なのかというと、1980年代初期まで歩んでいた道はなんと極道の道に進んでいた。
しかし、本当にこのまま進んでしまっていいのか、そんな気持ちをどこかに持ち続けていた。
まさにそのタイミングで間違いなくKRUSHさんの人生を変える出会いが訪れる。
それが以前にレビューさせて頂いた、映画『Wild Style』なのだ。
この映画で「銃で戦う代わりに、マイクを持って戦え」というメッセージに衝撃を受け、激動のHIPHOP人生がスタートしていった。
とはいえ、今の時代ほど恵まれている環境では当然なく、簡単に注目されたわけではない。
夜は工事現場のアルバイトをして何とか食いつないで数年。
ようやく本格的に名を馳せるきっかけとなったのが、ある日本映画のサントラのRemixがたまたまイギリスの新鋭レーベルMo’Waxで話題になったことだった。
そのままUKでLP ”STRICTLY TURNTABLIZED”をリリースすることになり、このLPの代表曲でもあり、DJ KRUSHの代名詞的な楽曲であるのが今回の『Kemuri』というわけだ。
DJ KRUSHはターンテーブルをまるで楽器のように扱う、”ターンテーブリスト”と呼ばれる先駆者といえるだろう。
MVからもわかると思うが、浮遊感のあるストリングスの上を飛び交う独創性のあるスクラッチや特異なサウンドこそ彼の音世界を唯一無二なものにしている。
音だけで聴く者の内側までもここまで魅了できるアーティストは世界でも有数だろう。
言葉にできないがなぜだか彼の音に”和”を感じるのは私だけではないはず。
静寂と力強さから、海外勢からは「ジャパニーズサムライ」と呼ばれていた。
日本刀からターンテーブルに武器を持ち変えて今も世界で戦っているのだ。
まさに彼の覚悟や姿勢は武士のソレに通づるものがあるのではないだろうか。