今回のレビューは前回のStill D.R.E.のMVにも一瞬登場したEMINEMについて書いていこうと思う。
今となってはHIPHOPの代名詞的な存在であるEMINEMだが、当時活動し始めから人気があったわけではなかった。
なぜか?それは白人であったからだ。
この辺りの背景については自身の半生を描いた映画『8 Mile』を観た方ならご存じのことと思う。(その辺りのエピソードは別の機会に)
世間からはそんな冷ややかな目で見られている中、スキルやセンスに注目をした男がいた。それが紛れもなく『Dr.DRE』なのだ。
ドレは友人伝いに『Slim Shady EP』を聴かされ、マジでやばいと唸ったらしい。
その後EMINEMのファーストアルバムとなる『The Slim Shady LP』を全面プロデュースしたことがブレイクした大きな要因の一つだろう。
このアルバムも衝撃だったのは事実だ。
しかし、私の中の過去の記憶にアクセスすると、どうしても印象が強いのがセカンドアルバム「The Marshall Mathers LP」に収録された今回の”STAN”だった。
雨の音が静かに聴こえる中、ラジオボイスのようなミックスで寂しげに歌うDidoのイントロに何度も引き込まれた。
ミニマルなドラム、メロディアスなベースライン、ライトなギターカッティングという恐ろしくシンプル組み合わが、エミネムのラップを引き立てている。
そんな”いい仕事”をしたトラックメーカーが、実はTHE 45KINGであることはあまり知られていない。
そしてこの重々しいラップの所以はリリックにある。
3バース目までは熱狂的なファンからエミネムへの手紙になるのだが、次第にエスカレートしていき、最後には正気を保たなくなっていく。
その様を描写したMVにも注目してみてほしい。狂気を感じるだろう。
4バース目にエミネムからそのファンに向けて手紙を返すが、時すでに遅しという内容だ。
これがフィクションなのか実話なのかはさておき、ストーリーライティングのセンスもかなり高いと感じる。
今となっては別の代表曲に埋もれ、なかなか目立たなくなってしまっているが、色褪せず素晴らしい楽曲であることは間違いないので、まだ聴いたことがないという方は是非この機会に聴いてみてほしい。
ヒップホップに触れて間もないビギナーが、これからEMINEMの音楽を楽しめる事はある種の特権とも言えるだろう。