J.Coleは自身の名義での活動歴もすでに15年あることもあり、好きな楽曲もたくさんある為、まずどの曲にしようかと悩んだのだが最新のアルバム『The Off-Season』から特に気に入っていたものをチョイス。
J.Cole自体は裕福な家庭で生まれたこともあって、ギャングスタのようなストリート育ちというわけではない。
むしろその逆で、中学生の時から作曲活動をしていたほどの恵まれた環境である。
ヴァイオリニストでもあった一方で、実はケンドリック・ラマーなどの著名のアーティストのプロデュースをしてこともあるのだが、あまり知られていない。
その他の経歴としてもプロバスケットボール選手として活躍されていたりと、信じられないほど多才な才能を開花させている。
天は二物を与えないのではなかったのか。
明らかに与えすぎである。
そんな成功者のポジションからの視点でリリックを描かれているものが多く、
ハングリーさとはまた違うが妙な説得力があると感じる。
今回レビューする『a m a r i』のリリックの内容としては、
今のラッパーというフィールドから離れようとしているようにも個人的に見える。
ドラッグなどが蔓延した世界から離れまともに生きる道を探せというメッセージが印象的だ。
「今では息子のダンクシュートをTVで観ている」というのも
過去の自分と重なるようでどこかノルタルジーを感じないだろうか。
トラックはアコースティックなギターが奏でるアルぺジオに笛の音色が広がっていき、これにアタックの立ったクリアなドラムが非常に相性が良く、トラック自体にも強い主張がある。
そんな ”クセつよ” なトラックにも負けないJ.Coleのラップにも注目したい。
特にお気に入りなのは1:30秒ほどの
「CO-OHH-OHH-OLDDD!!!」(COLD)
という叫びだ。完全にキレている。
文脈としては、
“野蛮な男どもが女に夢中になっているくせに、
用済みになったら外に放り出して帰らせる。
外は真冬で痛いほど寒い。(←ここのCOLD)
温まらないといけないのに。”
(※個人的な解釈含む)
これはそういったストリートで育っていないこともあり、呆れ呆れしている、と私は解釈している。
そんなライフステージの高さからかラップに品格すら感じる。
以前にレビューをした ”Abel Meri” にしてもそうだが、多様な時代だからこそ、そういったスタイルが成立し、むしろ私のような日本の平和ボケスタイルの人生観からするとそこに共感というものさえもある。
これは逆に私が20代前半であれば響いていなかったのかもしれない。
そう考えると人生の歩みと共にHIPHOPも進化していると言い換えることができるなら、やはり一生HIPHOPを聴いていくのだろうな改めて考えさせられた。
皆さんのライフステージにHIPHOPはマッチしていますか?