今回紹介していくのはJoey Bada$$。
彼はYouTubeにアップロードしたフリースタイルが、あの『Nipsey Hussle』を発掘したことでも有名なCinematic Music Groupというレーベルの創設者であるJonny Shipesの耳に止まった。
今から約12年前のことだが、当時USでフリースタイルが再燃している中で、光るものがあったと話していたインタビューをどこかで見た。
YouTubeきっかけとなるとなかなか今どき感もあり時代の流れを感じるが、元々ゲットーの代表とも言えるブルックリン出身ということもあり、しっかりとカルチャーを背負っているように思える。
それは今回レビューしていく ”Paper Trail$” でもよくわかるのではないだろうか。
2010年となると時代も90’sのような差別的な背景は薄れているが、格差社会は当然のようにある。
だが、この曲はそんなお金を中心に世界が回る以前の時代について考え、現金が自分の周りのすべてを台無しにするようなものだったというエピソードから、お金がJoeyをいかにネガティブに変えてしまったかをテーマにされている。
Paper Trail$も直訳では ”金でできた痕跡” もっといえば ”資本主義世界“ と言い換えることができるだろう。
楽曲の冒頭から印象的なスクラッチ。
そこで擦られるメッセージは 、
”金があればどうにでもなる”
“金さえ手に入ればいいんだ”
まさに上で記載した世界観を一言で言い表すようなパンチラインだと感じる。
悲しげなストリングスにノンビートでJoey Bada$$の前のめりなラップが走る。
リリックの深さもさることながら韻も非常に美しい。
ラップを邪魔することのない控えめなドラムも、より楽曲のクオリティを高めている。
プロデューサーはDJ Premier。
間違いないトラックなわけだ。
そんなビートの上を走り出したJoeyのラップには感情が乗り、文字通り息つく間もないほど最後までスピットしていく。
そしてバース後に“Cash rules everything around me”と繰り返す。
そう、前回レビューしたWu-tang Clan ”C.R.E.A.M.”のフレーズを歌っているのだ。
劣悪な環境に負けず自らの努力や挑戦によって抜け出していく様は、私の大好きなヒップホップの精神でもありこの楽曲をレビューしたいと思った。
モノクロの映像がさらにこの世界観に入り込ませるだろう。
Joey Bada$$は素晴らしい曲がたくさんあるが、中でもオススメの楽曲なので
「大切なものは何か」
と人生に躓きそうになっときには是非聴いて欲しい一曲です。