これまでに数々の日本語ラップの所謂アンダーグラウンドを聴いてきた。
しかし、それらとは全く交わらない、異端 オブ 異端と呼べる道をただひたすらに走り続けた2人の男がいる。
エレメント6番目(直感)を研ぎ澄まし、自分自身の内面とひたすら向き合って出来上がった、純度100%の濃厚な音と言葉のアート。
THA BLUE HERBとはそんな他の追随を許さない独創性をミルフィーユのように重ね合わせたアーティストだと思う。
その中で今回の『 知恵の輪 』は最初期にあたる時期にリリースされた音源になるのだが、前回にレビューをさせて頂いた巨匠”DJ KRUSH”がクラブでかけまくったことで強烈な追い風となった。
とはいえ、そこにKRUSH印の太鼓判がなかったとしても間違いなく世の中はブルーハーブを受け入れたことだろう。
ILL-BOSSTINO(当時はBOSS THE MC)の言葉選び、語呂感の気持ち良さには卓越したライミングセンスを感じる。
この曲でも随所に黒光りしている言葉達の中でお気に入りの一部を紹介してみようと思う。
例えば「地下一階出身 言葉の錬金術師」。
これもアングラのラッパーを表すのに非常にシンプルでありながら、語呂感の良さを感じる。実際に発声してみると良くわかるだろう。
他にも「神の手招きにも似た閃き」。
これもスピリチュアルではあるが、知恵の輪というタイトルからの結びつきも面白い。まるで必然だったと言わんばかりだ。
さらに好きなフレーズに
「後のことは決めた後に決めると決めた」
というものがある。
考えてもわからないならまず動き出す。というBOSSの行動指針とも取れるリリックが痛いほど共感できる。
音の振動に乗って伝わり、耳から入って心に衝撃を与える。
それはある種の拷問のようなものだ。
日本語ラップ界にも多大な影響を及ぼしており、当時は現に”ブルーハーブ以降”と呼ばれるほど根本から変革をしてしまい、無数のフォロワー(真似するラッパー)が生まれた。
痛烈なメッセージで日本列島を震撼させたラッパーILL-BOSSTINOこそが、日本版NASと言えるのかもしれない。