私がヒップホップにのめり込むきっかけとなった曲がいくつもある。
その一つがWu-Tang Clanの” C.R.E.A.M. ”だった。
当時ヒップホップを掘り始めて間もない初期の頃に当然出くわすHIPHOP CLASSICの代表格とも言える本曲はその「黒さ」「怪しさ」にとても惹かれた。
燃え盛る炎を背にメソッドマンのHOOKフレーズを皮切りにVerse1となるRaekwonのラップが開始する。
“俺はニューヨークタイムズに載るような犯罪が蔓延する世界で育った。生きていくのは大変だ。”
という歌い出しからも、当時の過酷な環境が想像できる。
ファッションも今のラッパーに見られるようなBring Bringとは対極にあるような外見で”生活臭”を感じる生々しさがある。
次にVerse2はInspectah Deck。
彼のラップも個人的には好みな方で、リリックも自身の投獄生活についてキックしており、心を揺さぶられる内容になっている。
そしてMethod ManのHOOKではあまりに有名なフレーズが登場する。
「Cash rules everything around me」
“ 俺の周りは常に現金が支配している ”
そう、C.R.E.A.M.とはこのフレーズの単語の頭文字をとってクリームとなっている。
ヒップホップのこういったリアルさをダイレクトに伝えられることで、平和ボケしていた自分には衝撃だったのかもしれない。
HIPHOPの直訳を” 反骨精神 ”とするならば、もはやそれ以外の何者でもないと思った。
それが当時、貧乏暇なしで必死にもがいていた自分には大きなエネルギーになったことを覚えている。
それまでの『J-POP』のいい曲だねぇであったり、『洋楽ROCK』のカッコイイなぁとは全く違い、音楽が人生の考え方、向き合い方を変え、ある種メンターのような存在になることを体感した。
こんなの音楽の1ジャンルを超えていることはお分かりいただけるだろう。
今の私があるのは間違いなく、この辺りの影響が大きいし、強さになっていると言える。
そういった背景からこのサイトにしてもそうですし、何かHIPHOPに貢献、還元ができないかと常に思っている。
これを読まれているあなたにもこの想いが届けばいいなと思っています。
P.S.
ちなみにWu-Tang ClanのリーダーはRZA(レザ)になるのだが、彼は中国の少林寺に感銘を受けており、「ウータン」は少林寺拳法の一つの流派で少林寺と武闘派があり、この後者のことをウータンと呼ぶため、そこから引用している。
本曲を収録する1st LP『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』もブルースリーの『燃えよドラゴン(Enter The Dragon)』と映画『少林寺三十六房(Shaorin 36 Chamber)』から取っていたりと、相当カンフーに影響を受けているようだ。
気になる方はそういった観点から映画も観てみるとまた違った楽しみ方ができるかもしれない。